■コンビニエンスストアとマッチ
マッチは常に供給過剰
マッチの国内販売量は1973年をピークにその後さがりつづけ2018年現在は当時の約1%になっている。
その原因はガス器具の自動着火、使い捨てライターの出現、紙巻きたばこの喫煙者の減少等によるものである。
従ってこの間ずっと供給過剰の状態が続いている。
コンビニ用マッチの開発
そこでエンドユーザーが買いやすくするのと販売店の商品回転率をあげる目的でポケットサイズマッチの2個パックをこしらえた。
1990年頃まではコンビニに12個パックのマッチが並んでいたが、いつまでも売れないため、マッチのラベルが日焼けして色あせた無残なものをよく目にした。
そのうちいよいよコンビニ店頭でマッチを見かけなくなった。
1998年この2個パックのマッチを定価60円でコンビニに販売開始した。
プレゼンすると当然のことながら「1個当たりの値段が高い」という、だけど小分けだから高くしないと成り立たない。
そんなやりとりをしている間に「こんなの欲しかったんです」というところが現れた、当時東北地方にあったサークルKノースであった。
店舗数も150店舗くらいで最初にやるには丁度よい規模で、98年6月の発売であった。
同98年9月にミニストップ10月にはローソンに導入された、この時ローソンはまだ6000店舗であった(2018年は14000店になっている)。
99年にデイリーヤマザキ2003年ファミリーマート2010年サークルKサンクス、2011年3月に発生した東日本大震災後の2011年12月にセブンイレブンに導入された。
2016年に唯一残っていたスリーエフに導入しコンビニ全社の導入が終わった。
この間18年の歳月を要したのは、マッチが皆が知っている古い商品であることと、値切るところにはその時供給せず時勢が変わるのを待ったからだった。
面白いプロジェクトであった。
コンビニ開拓中99年にコープとうきょう(現コープみらい)からこのコンビニ用2個パックの納入依頼があったときは想定外のことでびっくりした、
食品スーパーでも売れることが分かったので、それからは主に食品スーパーに販売提案し2004年にコープこうべ等に順次納品することになった。
バイヤーとの面談は面白いことだけ記憶に残っている。
1時間以上待たされて「ああ分かりやすい商品ですね、やるときは言うから」と5分もかからないで終わり、これが普通。
「こんなの売れたら日本橋を逆立ちして歩いてやる」とか、ファミリーマートでは「家の中で火を燃やす人はいないでしょ」だからアウトドア商品のカテゴリーとなって最初は夏季限定商品として採用された。
コンビニは2018年現在約50000店あってFCショップオーナーがマッチを置かないとこもあるので約半分くらいの店舗で販売されている。
小分け少量販売の先取り
2010年頃からしきりに少量販売が提唱され各小売店もそれにならっている。単身世帯の増加、普通の世帯でも持たない残さないライフスタイルとなった、
底流にはデフレ時代の要請がある、2個パックマッチはくしくもそれを先取りした結果となった。
2個パックのマッチを「特選マッチ」と名付けた。
タバコメイト、ちょいする(擦る)等いろいろ名称をリストアップしたがしっくりこない、以前マッチクラブの会員に好きなラベルのアンケートをした結果、
上位に桃印、象印、ツバメ印が入ったので会員たちが選んだという意味で「なじみの100年ラベル・特選マッチ」にした。
エンドユーザー第一に考える
少量小分けは工場もベンダーもやりたがらない。
工場はマッチトン数当たりの生産効率が悪くなる、ベンダーは細かすぎてピッキングの手間がかかる。
だけど使う現場、売っている現場を見たらよい、いっぺんに沢山使わないし(使用量が継続的に減っている)コンビニ店頭では12個パックは売れない(色あせて売れ残っていた)。
この状況を見ないようにして、造る側運ぶ側の都合だけで嫌がっている。
けれども結果として売れれば工場もベンダーもやらないわけにはいかない。
顧客第一とはこういうことである。
価格を上げても売れるのに造り手があきらめてなくなってしまう商品はある。
ずっと大量生産大量消費で安売り自慢が続いている時代であるが、大勢が使わなくなった商品でも中には使いたい人はいるのだから価格は高くしても供給すべきだ。
コンビニのチャネルも2017年2月から株式会社日東社が引き続き生産販売に当たっている。
黒田 康敬
2018年10月23日