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ロウマッチの擦り方
■犬笛のマッチケース

 銀製のマッチケースはアンティークショップでよく見かけるけれども、それはジッポライターのように蓋が開く平べったい形のものである。 この写真のものは筒型で首から下げて使う犬笛にマッチが仕込まれたものでとても珍しい。 裏側にはロウマッチ(STRIKE ANYWHERE MATCHES)を擦るためにギザギザが刻まれている。

 20年くらい前、兼松日産農林株式会社のマッチ部長山田章氏にロンドンの骨董市で買い求めてきてもらった。 以降貴重品としてしまい込んであったが、それでは勿体ないので非売品としてマッチコレクションズの店頭に展示することにした。

 犬笛とは牧童が羊の群れを追う牧羊犬に合図をおくるものである。

 本品に刻印された品質保証マークである「ホールマーク」から、この手のアンティークに造詣の深い株式会社柘製作所の柘恭三郎氏に鑑定してもらったところ、 バーミンガムの認証事務所の刻印で1897年製のものであった。

 バーミンガムはロンドンとリヴァプールのちょうど中間地点にあり、産業革命の進展に伴い工業都市として発展した。 特にシルバー製品の名産地だったので1773年に認証事務所が創設された。

 ホールマークを刻印できる機関は、国によって定められている。 アセイ(試金)オフィスと呼ばれるこの機関はロンドン、エディンバラ、バーミンガム、シェフィールドの4ヶ所が英国に現存している。

黒田 康敬
2015年12月08日