■ロウマッチ ―― 名前の由来
マッチ箱で擦るのではなく、靴の裏とかコンクリートとかザラザラしたところに擦りつけて発火させるマッチ、S.A.W. (STRIKE ANYWHERE MATCH) マッチのことを、日本では通常ロウマッチと呼びます。漢字では蝋燐寸と書きます。
蝋マッチとはもともと黄燐マッチの通称でありました。黄燐マッチは頭薬だけで発火する摩擦マッチ、つまりS.A.W.マッチであります。
で黄燐の外見が黄色の半透明で蝋のように見えたので「蝋マッチ」と呼んだと推測されます。
1900年頃の英国には WAX VESTAS というマッチがありますが、こちらのWAXはロウ軸マッチ(パラフィンを浸透させた紙を巻き固めた軸)のことであり、また VESTAS とはローマ神話にある火の女神の名前で、英国マッチ業界では通常喫煙用の短い軸のマッチのことを言います。この WAX VESTAS も日本では蝋マッチと言われています。ちなみに頭薬は S.A.W. でした。
黄燐マッチは黄燐が有毒であることと、自然発火の危険性があることとで1912年世界中で製造禁止になっています。
そして日本ではロウマッチの名前だけが残りました。現在販売されている木軸のロウマッチは欧米で製造されている無害の硫化燐マッチであります。
参考文献
明治43年8月20日発行 石井研堂著「少年工芸文庫・マッチの巻」
昭和10年8月16日発行 大阪時事新報「竹軸マッチ」
黒田 康敬
2003年06月09日