■徳用型マッチの使命は終った
徳用型マッチとは台所に置いてあったあの大箱マッチのことで、昭和4年から大同燐寸(兼松日産農林マッチ部の前身)が考案し作り始め今日に至っています。荒物屋やスーパーで売っているマッチが徳用型と並型(スタンダードサイズ)マッチです。
どこが徳用か
徳用型マッチの1個に入っているマッチの本数は約800本、並型マッチ12個の本数は約500本、これが同値(定価250円)で販売されています。従って約4割お得ということです。しかし今、安価なライターと比べれば、着火コストはお得ではありません。
使われ方
徳用型マッチは台所のかまどのそばに置いてありました。従って台所の着火に使われたわけであります。一方ポケットサイズの並型は携帯用でありますから、この中身が減ると徳用型からマッチ棒を並型マッチ箱に詰めかえて使ったものです。70年以前の並型マッチは擦薬が箱の両側に塗ってあったのでマッチ箱としての再使用に充分耐えたのであります。
減り方
東京オリンピックの前後から、台所の自動点火と広告マッチの大量頒布が始まりましたので、65年から75年の減少はこれによるものです。75年から80年の極端な減少は使い捨てライターの出現によるものです。従ってマッチの大半が喫煙用に使われていたことが分かります。つまり徳用型マッチで言えば詰め替え用途です。
65年と2000年を比較すると、マッチの消費量は、徳用型と並型との合計では20分の1ですが、内訳は並型約5分の1、徳用型は約100分の1であります。大量消費するものには詰め替え用が必要ですが、この数字を見れば徳用型マッチの使命は終ったと言わざるを得ません。
今の状況
昔は火鉢とか練炭があり、家の中にいつも火の気がある状態が普通でしたが、今は火の元が沢山あると「こわい」と感じるようです。
昭和30年代の街並みがテーマになる昨今では、当時を再現するインテリアとして徳用型マッチが存在します。
つまりマッチは、ゆったりした時間を過ごしたいというスローライフを実践しているということの記号として存在するわけですから、携帯できることが商品要素となります。
それらの理由によって、ポケットサイズの並型マッチの方が使われていると考えられます。
黒田 康敬
2003年05月01日